毎月定額が引き落とされる。送られてくる報告書には稼働率と障害件数が並んでいるが、何をしてくれたのかはよくわからない。障害が起きたら起きたで、別途調査費用を請求される。
「これ、払い続ける意味あるんだっけ?」——そう感じたことがある方は、少なくないはずです。でもそれは、あなたの感覚が正しいです。問題は保守費用そのものではなく、「何を守っているか」が発注者に見えていないことにあります。
本記事では、他社が開発したシステムを引き継いできた私たちが見てきた「保守契約の実態」をもとに、発注者として保守契約を正しく評価するための基準を整理します。
一般的な保守とSTVテックが考える保守の違い、発注者が開発会社に求めるべき3つの報告指標、そして保守契約を見直すべきサインがわかります。
新しいことを始めたいのに、今のシステムが足枷になっていて数ヶ月待たされる。それこそ、あなたが毎月「保守費用」を払って守ってきたはずのシステムの末路かもしれません。
私たちは他社が開発したシステムを引き継ぐ機会が多くあります。そのとき、引き継ぎ前まで保守契約が継続していたケースでも、こんな状態に遭遇することが少なくありません。
保守費用は毎月払われていた。でも、システムの資産価値は静かに劣化していた——これが現場で繰り返し見てきた実態です。
誰も悪意を持っていたわけではありません。開発会社は「障害が起きなければ問題なし」という認識で動いていた。発注者は「何も言ってこないから大丈夫」と思っていた。その認識のズレが、じわじわとシステムの寿命を縮めていたのです。
多くの開発会社が提供しているのは「現状維持」の保守です。障害が起きたら対応する、サーバーが落ちたら復旧する——いわばリアクティブな対応です。
しかし発注者が本当に求めているのは「資産防衛」です。システムという資産が劣化していないか、ビジネスの変化に取り残されていないか——これをプロアクティブに監視・報告・提案できる保守です。
| 項目 | 一般的な保守(現状維持) | STVテックの保守(資産防衛) |
|---|---|---|
| 報告内容 | サーバーの死活監視結果のみ | 蓄積されたデータの傾向やリスクを報告 |
| 障害対応 | 言われてから動く(リアクティブ) | 予兆を検知して提案する(プロアクティブ) |
| アップデート | 動かなくなるまで何もしない | ライブラリの風化を防ぎ、改修コストを抑える |
| 業務との整合性 | 確認しない | 現在の業務フローとの乖離を定期チェック |
| 改善提案 | 求められるまで動かない | 小さな改善を自律的に提案・実施 |
「現状維持」の保守が悪いわけではありません。ただ、発注者がそれで満足しているかどうかは別の話です。「何も起きていない」という報告だけで毎月費用が発生しているなら、何を対価として払っているのかを一度整理する価値があります。
「もっとちゃんと報告してほしい」と伝えたくても、何を求めればいいかわからない——そういう発注者のために、具体的に「これを報告してください」と言える3つの指標を紹介します。
古くなった技術(ライブラリ・フレームワーク・言語バージョン)を放置すると、将来の改修費用が跳ね上がります。「現在使用している技術のサポート期限と、更新が必要なものの一覧」を定期的に報告してもらうことで、費用が跳ね上がる前に手を打てます。
新しい機能を追加しようとしたら、「今の土台が古すぎて、まず土台の入れ替えに数百万円かかります」と言われた——これこそが、保守で技術的負債を放置し続けた結果です。定期的に観測していれば、小さなコストで防げたはずのことです。
2年前に作った機能が、今の業務フローでも本当に使われているか——これを誰も確認していないケースが多いです。使われていない機能の保守は無駄な出費です。「現在の業務で使われていない機能の洗い出し」を年1回でも実施することで、無駄を削ぎ落とせます。
保守時間の中で、小さなUI改善やバグ修正をどれだけ自律的に行っているか。「今月対応した改善と、来月提案したい改善」を報告してもらうことで、保守費用が「何も起きなかった費用」ではなく「前進するための費用」になります。
3つの指標を実際の報告書に落とし込むと、こんな違いが生まれます。
サーバー稼働率99.9%、障害件数0件。来月も引き続き監視を継続します。
・今月はセキュリティパッチを2箇所適用しました。既知の脆弱性リスクを解消しています。
・2年以上使われていない「請求書再発行ボタン」を来月削除することを提案します。保守対象が減り、将来のバグ発生率を下げられます。
・使用ライブラリのうち1件が来月サポート終了予定です。更新の見積もりを次回お送りします。
「毎月の報告にこの3点を加えてほしい」と伝えるだけで構いません。対応できない、あるいは渋る会社であれば、それ自体が保守体制を見直すサインです。
以下に当てはまるものがあれば、現在の保守契約を一度見直すことをお勧めします。
これらは「保守契約の中で知見の継承が守られていない」証拠です。担当者が変わるたびにゼロから調査が必要になるということは、それまでの保守費用で蓄積されるはずだった知識が、どこにも残っていないということです。
属人化を恐れる企業ほど、この視点は重要です。「あの人しかわからない」という状態がシステムにも起きているとしたら、それはリスクです。保守契約を通じて知見を組織の資産として蓄積できているかどうかを、一度確認する価値があります。
保守契約の価値は「障害対応の速さ」だけではありません。「システムの知見をどれだけ蓄積・継承しているか」が、長期的なコストを左右します。
もし、今のシステムが安定しており、今後1年以上改修の予定がないなら——一度保守契約を解約してスポット対応に切り替えるのも、一つの正解です。
私たちはそれを正直にお伝えします。なぜなら、必要のない費用を払い続けてもらうことは、長期的な信頼関係の構築につながらないからです。「改修が必要になったとき、スポットで相談できる会社」として覚えていてもらう方が、双方にとって健全だと考えています。
逆に言えば、保守契約が必要なのは「システムが進化し続けるフェーズ」です。ビジネスの変化に合わせてシステムも変わり続ける必要があるなら、その変化を先読みして提案できる保守パートナーを選ぶことが重要です。
月額の保守費用は、「何も起きなかった安心料」ではありません。システムという資産が劣化せず、ビジネスの変化に追いつき続けられるよう守るための費用であるべきです。
| 確認すべきこと | 発注者として取るべきアクション |
|---|---|
| 報告内容の確認 | 「今月の稼働に問題ありません」以外の情報が含まれているか確認する |
| 技術的負債の把握 | 使用技術のサポート期限と更新リストを定期的に報告してもらう |
| 業務との乖離チェック | 使われていない機能の洗い出しを年1回実施する |
| 知見の継承確認 | 担当者が変わっても同じ品質の対応ができるか確認する |
| 解約の検討 | 改修予定がない安定期はスポット対応への切り替えも検討する |
「払い続ける意味があるか」を問うことは、開発会社への不信感ではありません。システムという資産を正しく管理するための、発注者としての当然の権利です。