「システムを作りたい」という話は、社内で決まった。ところが、開発会社に問い合わせようとした瞬間に手が止まる。メールの本文に、何をどこまで書けばいいのかがわからない。
かといって「とりあえず相談したい」と連絡すれば、今度は開発会社から「要件はどのあたりまで固まっていますか」「認証はどうしますか」「既存システムとの連携は」と質問が返ってきます。答えられない。悪気なく専門用語で話されるほど、こちらは何を答えれば正解なのかわからなくなる。
この記事は、その「書けない・答えられない」状態にいる発注者に向けたものです。開発会社に渡すべき情報は、実は決まっています。その中身を整理したうえで、質問に答えていくだけでその書類(RFP=提案依頼書)が作れる無料ツールを、実際の設問と出来上がりを一部公開しながらご案内します。
開発会社に相談する前に整理しておくべき情報の中身と、それを専門知識なしで書類の形にする方法がわかります。ツールで実際に聞かれる質問と、出来上がるRFPの中身も、一部公開しています。
「開発会社に問い合わせのメールを書こうとしたが、『こういうシステムを作りたいです』の先が続かない。3行で止まっている。」
書けない理由は、知識が足りないからではありません。書くべき項目の一覧を、誰も渡してくれないからです。
引っ越しを思い浮かべてください。業者のサイトを開けば、「いつ」「どこからどこへ」「何人家族か」「エレベーターはあるか」と、聞かれることが最初から画面に並んでいます。だから見積もりを頼むのに迷いません。上から埋めていけば終わりです。専門知識は要りません。
ところがシステム開発には、この入力フォームにあたるものが、発注者側に渡されていません。だから毎回、白紙のメールから書き始めることになります。
そして白紙から書き始めた文章は、たいてい「作りたいものの説明」だけになります。開発会社が見積もるために本当に必要な情報——誰が使うのか、いつまでに要るのか、いくらまでなら出せるのか、今は何に困っているのか——が抜け落ちる。結果、見積もりが出てこないか、幅の広すぎる概算しか返ってこないことになります。
「初回の打ち合わせで、認証方式・API連携・非機能要件という言葉が出てきた。わからないとは言い出せず、『検討します』と答えて持ち帰った。」
開発会社が専門用語で質問してくるのは、悪意でも不親切でもなく、社内で普段使っている言葉のまま話しているだけです。ただ、それを受ける側からすると、質問の意味がわからない以前に「これは自分が決めることなのか、開発会社が決めることなのか」の切り分けすらつきません。
原則として、次のように分けて考えると整理がつきます。
| テーマ | 開発会社が提案・判断すること | 発注者が最初に整理すること |
|---|---|---|
| 作り方 | どの技術で作るか | 何のために作るか |
| 設計 | どういう構造で作るか | 誰が使うか |
| 進め方 | どういう手順で進めるか | いつまでに必要か |
| 環境 | どこにどう置くか | いくらまで出せるか |
| 体制 | 何人でどう進めるか | 今、何に困っているか |
中央の列は、答えられなくて構いません。発注者が最初に整理すべきなのは右の列で、これらは社内の事情を知っている人にしか答えられないことです。
💡 補足:もちろん例外はあります。社内で使う技術やインフラの標準が決まっている、既存の基盤に合わせる必要がある、といった理由で発注者側が技術を指定するケースもあります。その場合は「決まっている制約」として伝えれば十分で、決まっていないなら無理に決める必要はない、ということです。
前章の右の列を、もう少し具体的に言い換えます。開発会社が知りたいのは、次のようなことです。
これらは技術の話ではありません。社内の事情の話です。そして、この情報がないまま見積もりを作ると、開発会社は最悪の場合を想定してリスク分を上乗せするか、逆に安く見積もって後から追加費用が発生することになります。
「専門知識がないから相談できない」のではありません。むしろ逆で、発注者しか持っていない情報こそが、開発会社の欲しいものです。現場で今どう回っていて、何に困っているのか。それは社外から来る開発会社には見えません。専門知識でどうにかなる話ではなく、中にいる人に聞くしかない情報です。
発注時に開発会社へ渡す書類を、一般にRFP(提案依頼書)と呼びます。名前は仰々しいですが、中身は「提案と概算見積もりを出してもらうために必要な情報を、あらかじめまとめた紙」以上のものではありません。
項目は、おおむね次の7つのグループに整理できます。
| # | 項目 | 書く内容 |
|---|---|---|
| 1 | 案件タイプ・基本情報 | 新規開発かリニューアルか、会社名、担当者、連絡先 |
| 2 | 背景・目的・現状の課題 | 今どう困っているか、なぜ今やるのか |
| 3 | 依頼内容・想定利用者 | 何を作ってほしいか、誰が何人使うか |
| 4 | 要件 | 絶対に必要なこと、あれば嬉しいこと、守ってほしい条件 |
| 5 | スケジュール・予算 | いつまでに、いくらまでで、保守はどうするか |
| 6 | 提案書内容・評価基準 | 提案書に何を書いてほしいか、何を見て選ぶか |
| 7 | 選定プロセス・契約条件 | どう選ぶか、契約形態、著作権、NDAの要否 |
💡 ポイント:この7つが揃っていれば、開発会社は提案と概算見積もりを出せます。逆に言えば、揃っていない状態で問い合わせると、最初の数回の打ち合わせは「この7つを聞き出すための時間」に費やされます。
ここでひとつ、先にお断りしておきます。これは「これだけ書けば要件がすべて固まる」という意味ではありません。実際の開発では、非機能要件、セキュリティ、外部システム連携、データ移行、権限設計、運用体制、法令や社内規定への対応など、詰めるべきことがこの先にたくさんあります。それらは契約後の要件定義フェーズで、開発会社と一緒に詰めていくものです。
ここで、金額についても先に整理しておきます。システム開発の見積もりは、1回では確定しません。提案時に出てくる金額と、最終的に支払う金額は、出るタイミングも性質も違います。
| タイミング | 出てくる見積もり | 性質 |
|---|---|---|
| RFPを渡して 提案を受けた時点 | 概算見積もり | 「この前提なら、だいたいこのくらい」という金額。幅(レンジ)で提示されることもある。会社を比較・選定するための材料 |
| 契約後、 要件定義を終えた時点 | 確定見積もり | 作るものが具体的に決まったうえでの金額。ここで最終的な金額と納期が確定する |
つまり、RFPを渡して返ってくるのは概算見積もりです。これは手抜きではなく、作るものが確定していない段階では、それ以上の精度を出しようがないためです。要件定義で「何を作るか」が決まって初めて、確定見積もりが出せます。
💡 ポイント:概算と確定で金額が動くこと自体は、異常ではありません。ただし発注者としては、①概算の前提条件(何を含み、何を含まないか)を提案時に確認しておくこと、②確定見積もりで差が出たときに「なぜ差が出たのか」の説明を求めること、この2つは押さえておくべきです。ここを説明できない会社は、その後の変更対応でも同じことになります。
この7つは、その手前——「相談していい状態」「相見積もりを取れる状態」にするための7つだとお考えください。
ここで多くの方が身構えます。「7項目も埋められない」と。
埋まらない項目があって当然です。
たとえば予算。社内でまだ議論していない段階なら、金額は書けません。その場合、無理に数字を書く必要はなく、「未定」「相談したい」と書いてあるほうが、開発会社としてはよほど扱いやすい情報です。「書いていない」と「決まっていないと書いてある」は、受け取る側にとってまったく別の情報だからです。
| 予算欄の状態 | 開発会社側の受け取り方 |
|---|---|
| 何も書いていない | 書き忘れなのか、書きたくないのか、決まっていないのかが判断できない。確認の往復が発生する |
| 「未定・要相談」と書いてある | 決まっていないことが確定情報になる。「では概算のレンジからご提案します」と次の一手が打てる |
RFPは、完璧に埋めるための書類ではなく、わかっていること・わかっていないことを仕分けするための書類です。
全項目を答えても、目安は10〜15分です。ここまでの7項目を、質問に答えるだけで書類の形にできるツールを、STVテックでは「かんたんRFP作成サイト」としてご用意しています。1章で触れた「引っ越し業者の見積もりフォーム」にあたるものだとお考えください。画面は全8ステップで構成されていますが、実際に何かを答えるのは前章の7項目、つまり最初の7ステップまでです。8ステップ目は入力内容を確認して生成するだけで、新たに何かを聞かれることはありません。
ただ、この手のツールで一番気になるのは「で、実際どんな質問をされるの?」だと思います。使ってみたら答えられない質問ばかりだった、では時間の無駄です。
そこで、入力の7ステップで実際に聞かれることを、一部公開します。答えられそうかどうかを、ここで判断してみてください。
| ステップ | 実際に聞かれること 一部公開 |
|---|---|
| 01基本情報 | 新規開発かリニューアルか/案件名//// |
| 02背景・目的 | 今回の発注に至った経緯/実現したいこと・ゴール/現状の課題// |
| 03依頼内容 | 依頼内容の種類(Webサイト/ECサイト/// から選択)/依頼内容の詳細// |
| 04要件 | 絶対に必要なこと(いくつでも追加可)//連携が必要な既存システム/セキュリティ・個人情報で配慮すべき点/非機能要件(性能・稼働率)/アクセシビリティ ※後半4つはすべて「わからない」を選べます |
| 05時期・予算 | //予算感(から選択)//納品後にお願いしたい保守・運用の範囲 |
| 06提案・評価 | 提案書に書いてほしい内容(会社概要・実績/////)/選定の評価基準(////セキュリティ) |
| 07契約条件 | //契約形態/成果物の著作権の扱い/NDAの要否/ |
の箇所は伏せています。全項目は実際の画面でご確認いただけます。
💡 ステップ04・05・07にご注目ください。セキュリティ、非機能要件、既存システム連携、データ移行、保守・運用、著作権、NDA——技術者が「本当にそれだけで足りるのか」と気にする領域は、ちゃんと設問に入っています。そのうえで、すべて「わからない」で先に進めるようになっています。
左に8ステップの目次。今どこにいるかが常に見えます
前章の7項目が、そのまま画面のステップ01〜07になっています。上から順に答えていくだけです。
設問文には「専門用語は不要です」と明記されています
入力欄に書かれているのは、次章で使う「店舗の在庫管理」の例です。ご覧のとおり、話し言葉のままで構いません。
機能の説明よりも、実際に何がどう変わるのかをご覧いただくのが早いと思います。以下は、実際にツールで作成したものです。
「店舗の在庫管理をシステム化したい」
この状態で問い合わせると、開発会社は「規模は?」「今はどうしている?」「予算は?」と聞き返すしかありません。数回のやりとりが発生します。
今はどう管理しているか/何に困っているか/誰が何人使うか/絶対に必要なことは何か/いつまでに欲しいか/予算感/既存データを引き継ぐか/保守はどうするか/提案書に何を書いてほしいか/何を基準に選ぶか
技術の話は一つもありません。すべて社内の事情です。わからない項目は「わからない」のまま進めます。
そのまま複数の開発会社に配れる、17項目・A4で7ページの提案依頼書
この案件では、17項目のうち11箇所が「わからない」のままでした。半分以上が埋まっていない状態でも、書類としては成立します。大事なのは空欄ではなく「わからない(提案時にご提案いただきたい)」と印字されることで、受け取った開発会社は、そこが検討対象だと理解できます。埋められなかった箇所が多いほど「相談すべきこと」が明確になる、と捉えてください。
話し言葉で書いた内容が、そのまま項目に収まります
「既存データの引き継ぎ」は、わからないまま進めた項目です。空欄ではなく、その旨が明記されて出力されています。
技術的な項目は、答えていなくても「項目として」立ちます
必須要件は「タブレットで操作できること」「原価を店舗スタッフに表示しないこと」のように、業務の言葉のままで構いません。その下の技術的な4項目は、すべて「わからない」で通した状態です。
複数の開発会社に同じ条件で依頼できるようになります。各社が同じ前提で提案してくるので、見積もりを横に並べて比較できます。
そして「わからない」と書いた11箇所が、そのまま各社の提案力を見比べるポイントになります。ここに何を書いてくるかで、会社の姿勢がわかります。
RFPには、社内の業務内容、現在使っているシステム、予算、抱えている課題、取引条件など、社外に出したくない情報が入ります。「入力したら、どこかに保存されるのでは」という不安はもっともです。
かんたんRFP作成サイトは、入力内容をサーバーに送信しません。すべてお使いのブラウザの中だけで処理され、生成されたRFPもブラウザ上で組み立てられます。テキストのコピー、ファイルのダウンロード、PDFとして保存/印刷も、そのままお手元で完結します。
作成したRFPは、そのまま他の開発会社に提出していただいて構いません。相見積もりを取るための土台としてお使いください。
このツールの目的は、発注者と開発会社が「同じ前提」で話せる状態をつくることです。比較検討の結果、他社に決まっても問題ありません。
無料でご利用いただけます。1営業日以内にメールでお送りします。
本記事では、「開発会社に何を伝えればいいかわからない」という発注者の課題を整理しました。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 書けないのは知識不足ではない | 書くべき項目の型が、発注者側に共有されていないだけ |
| 専門用語は答えなくていい | 技術の判断は原則として開発会社の仕事。発注者は社内の事情を答えればいい |
| 発注者が持つ情報こそが要る | 現場の困りごと・使う人・期限・予算は、発注者しか知らない |
| まず渡すのは7項目 | 要件をすべて固める書類ではなく、相談・相見積もりを始めるための7項目 |
| 空欄があっていい | 「わからない」と書いてあること自体が、開発会社にとっては情報になる |
| 見積もりは2段階 | 提案時は概算見積もり。確定見積もりが出るのは要件定義を終えた後 |
| 一行の要望が書類になる | 「在庫管理をシステム化したい」から、17項目のRFPが作れる |
システム開発の発注で最初につまずくのは、技術ではなく「何を伝えればいいかわからない」という一点です。そこさえ越えれば、あとは開発会社の仕事になります。
無料でご利用いただけます。下のフォームからご連絡いただければ、1営業日以内にご利用方法をメールでお送りします。
「ちょっと試してみたい」という段階でのお問い合わせも歓迎しています。
お送りするのはツールのご案内のみです。
作成したRFPは、他社への相見積もりにそのままお使いいただけます。