要件定義・発注

「何を書けばいいかわからない」まま、
開発会社に相談していませんか

株式会社STVテック  │  公開日:2026年8月  │  更新日:2026年8月20日  │  対象:システム開発の発注担当者・情報システム部門・経営企画

「システムを作りたい」という話は、社内で決まった。ところが、開発会社に問い合わせようとした瞬間に手が止まる。メールの本文に、何をどこまで書けばいいのかがわからない。

かといって「とりあえず相談したい」と連絡すれば、今度は開発会社から「要件はどのあたりまで固まっていますか」「認証はどうしますか」「既存システムとの連携は」と質問が返ってきます。答えられない。悪気なく専門用語で話されるほど、こちらは何を答えれば正解なのかわからなくなる。

この記事は、その「書けない・答えられない」状態にいる発注者に向けたものです。開発会社に渡すべき情報は、実は決まっています。その中身を整理したうえで、質問に答えていくだけでその書類(RFP=提案依頼書)が作れる無料ツールを、実際の設問と出来上がりを一部公開しながらご案内します。

この記事でわかること

開発会社に相談する前に整理しておくべき情報の中身と、それを専門知識なしで書類の形にする方法がわかります。ツールで実際に聞かれる質問と、出来上がるRFPの中身も、一部公開しています。

目次

1. なぜ「何を書けばいいかわからない」のか

よくある場面

「開発会社に問い合わせのメールを書こうとしたが、『こういうシステムを作りたいです』の先が続かない。3行で止まっている。」

書けない理由は、知識が足りないからではありません。書くべき項目の一覧を、誰も渡してくれないからです。

引っ越しを思い浮かべてください。業者のサイトを開けば、「いつ」「どこからどこへ」「何人家族か」「エレベーターはあるか」と、聞かれることが最初から画面に並んでいます。だから見積もりを頼むのに迷いません。上から埋めていけば終わりです。専門知識は要りません。

ところがシステム開発には、この入力フォームにあたるものが、発注者側に渡されていません。だから毎回、白紙のメールから書き始めることになります。

そして白紙から書き始めた文章は、たいてい「作りたいものの説明」だけになります。開発会社が見積もるために本当に必要な情報——誰が使うのか、いつまでに要るのか、いくらまでなら出せるのか、今は何に困っているのか——が抜け落ちる。結果、見積もりが出てこないか、幅の広すぎる概算しか返ってこないことになります。

2. 専門用語が通じないのは、発注者のせいではない

よくある場面

「初回の打ち合わせで、認証方式・API連携・非機能要件という言葉が出てきた。わからないとは言い出せず、『検討します』と答えて持ち帰った。」

開発会社が専門用語で質問してくるのは、悪意でも不親切でもなく、社内で普段使っている言葉のまま話しているだけです。ただ、それを受ける側からすると、質問の意味がわからない以前に「これは自分が決めることなのか、開発会社が決めることなのか」の切り分けすらつきません。

原則として、次のように分けて考えると整理がつきます。

テーマ開発会社が提案・判断すること発注者が最初に整理すること
作り方どの技術で作るか何のために作るか
設計どういう構造で作るか誰が使うか
進め方どういう手順で進めるかいつまでに必要か
環境どこにどう置くかいくらまで出せるか
体制何人でどう進めるか今、何に困っているか

中央の列は、答えられなくて構いません。発注者が最初に整理すべきなのは右の列で、これらは社内の事情を知っている人にしか答えられないことです。

💡 補足:もちろん例外はあります。社内で使う技術やインフラの標準が決まっている、既存の基盤に合わせる必要がある、といった理由で発注者側が技術を指定するケースもあります。その場合は「決まっている制約」として伝えれば十分で、決まっていないなら無理に決める必要はない、ということです。

3. 発注者が伝えるべきなのは「技術」ではなく「事情」

前章の右の列を、もう少し具体的に言い換えます。開発会社が知りたいのは、次のようなことです。

これらは技術の話ではありません。社内の事情の話です。そして、この情報がないまま見積もりを作ると、開発会社は最悪の場合を想定してリスク分を上乗せするか、逆に安く見積もって後から追加費用が発生することになります。

つまり、こういうことです

「専門知識がないから相談できない」のではありません。むしろ逆で、発注者しか持っていない情報こそが、開発会社の欲しいものです。現場で今どう回っていて、何に困っているのか。それは社外から来る開発会社には見えません。専門知識でどうにかなる話ではなく、中にいる人に聞くしかない情報です。

4. まず相談するために渡す情報は、この7つ

発注時に開発会社へ渡す書類を、一般にRFP(提案依頼書)と呼びます。名前は仰々しいですが、中身は「提案と概算見積もりを出してもらうために必要な情報を、あらかじめまとめた紙」以上のものではありません。

項目は、おおむね次の7つのグループに整理できます。

#項目書く内容
1案件タイプ・基本情報新規開発かリニューアルか、会社名、担当者、連絡先
2背景・目的・現状の課題今どう困っているか、なぜ今やるのか
3依頼内容・想定利用者何を作ってほしいか、誰が何人使うか
4要件絶対に必要なこと、あれば嬉しいこと、守ってほしい条件
5スケジュール・予算いつまでに、いくらまでで、保守はどうするか
6提案書内容・評価基準提案書に何を書いてほしいか、何を見て選ぶか
7選定プロセス・契約条件どう選ぶか、契約形態、著作権、NDAの要否

💡 ポイント:この7つが揃っていれば、開発会社は提案と概算見積もりを出せます。逆に言えば、揃っていない状態で問い合わせると、最初の数回の打ち合わせは「この7つを聞き出すための時間」に費やされます。

ここでひとつ、先にお断りしておきます。これは「これだけ書けば要件がすべて固まる」という意味ではありません。実際の開発では、非機能要件、セキュリティ、外部システム連携、データ移行、権限設計、運用体制、法令や社内規定への対応など、詰めるべきことがこの先にたくさんあります。それらは契約後の要件定義フェーズで、開発会社と一緒に詰めていくものです。

見積もりは2段階で出てくる

ここで、金額についても先に整理しておきます。システム開発の見積もりは、1回では確定しません。提案時に出てくる金額と、最終的に支払う金額は、出るタイミングも性質も違います。

タイミング出てくる見積もり性質
RFPを渡して
提案を受けた時点
概算見積もり「この前提なら、だいたいこのくらい」という金額。幅(レンジ)で提示されることもある。会社を比較・選定するための材料
契約後、
要件定義を終えた時点
確定見積もり作るものが具体的に決まったうえでの金額。ここで最終的な金額と納期が確定する

つまり、RFPを渡して返ってくるのは概算見積もりです。これは手抜きではなく、作るものが確定していない段階では、それ以上の精度を出しようがないためです。要件定義で「何を作るか」が決まって初めて、確定見積もりが出せます。

💡 ポイント:概算と確定で金額が動くこと自体は、異常ではありません。ただし発注者としては、①概算の前提条件(何を含み、何を含まないか)を提案時に確認しておくこと、②確定見積もりで差が出たときに「なぜ差が出たのか」の説明を求めること、この2つは押さえておくべきです。ここを説明できない会社は、その後の変更対応でも同じことになります。

この7つは、その手前——「相談していい状態」「相見積もりを取れる状態」にするための7つだとお考えください。

5. 書けないところは「わからない」のままでいい

ここで多くの方が身構えます。「7項目も埋められない」と。

埋まらない項目があって当然です。

たとえば予算。社内でまだ議論していない段階なら、金額は書けません。その場合、無理に数字を書く必要はなく、「未定」「相談したい」と書いてあるほうが、開発会社としてはよほど扱いやすい情報です。「書いていない」と「決まっていないと書いてある」は、受け取る側にとってまったく別の情報だからです。

予算欄の状態開発会社側の受け取り方
何も書いていない書き忘れなのか、書きたくないのか、決まっていないのかが判断できない。確認の往復が発生する
「未定・要相談」と書いてある決まっていないことが確定情報になる。「では概算のレンジからご提案します」と次の一手が打てる

RFPは、完璧に埋めるための書類ではなく、わかっていること・わかっていないことを仕分けするための書類です。

6. で、実際どんな質問をされるのか(一部公開します)

全項目を答えても、目安は10〜15分です。ここまでの7項目を、質問に答えるだけで書類の形にできるツールを、STVテックでは「かんたんRFP作成サイト」としてご用意しています。1章で触れた「引っ越し業者の見積もりフォーム」にあたるものだとお考えください。画面は全8ステップで構成されていますが、実際に何かを答えるのは前章の7項目、つまり最初の7ステップまでです。8ステップ目は入力内容を確認して生成するだけで、新たに何かを聞かれることはありません。

ただ、この手のツールで一番気になるのは「で、実際どんな質問をされるの?」だと思います。使ってみたら答えられない質問ばかりだった、では時間の無駄です。

そこで、入力の7ステップで実際に聞かれることを、一部公開します。答えられそうかどうかを、ここで判断してみてください。

ステップ実際に聞かれること 一部公開
01基本情報 新規開発かリニューアルか/案件名/
02背景・目的 今回の発注に至った経緯/実現したいこと・ゴール/現状の課題/
03依頼内容 依頼内容の種類(Webサイト/ECサイト/ から選択)/依頼内容の詳細/
04要件 絶対に必要なこと(いくつでも追加可)//連携が必要な既存システム/セキュリティ・個人情報で配慮すべき点/非機能要件(性能・稼働率)/アクセシビリティ
※後半4つはすべて「わからない」を選べます
05時期・予算 /予算感(から選択)//納品後にお願いしたい保守・運用の範囲
06提案・評価 提案書に書いてほしい内容(会社概要・実績/)/選定の評価基準(/セキュリティ)
07契約条件 /契約形態/成果物の著作権の扱い/NDAの要否/

の箇所は伏せています。全項目は実際の画面でご確認いただけます。

💡 ステップ04・05・07にご注目ください。セキュリティ、非機能要件、既存システム連携、データ移行、保守・運用、著作権、NDA——技術者が「本当にそれだけで足りるのか」と気にする領域は、ちゃんと設問に入っています。そのうえで、すべて「わからない」で先に進めるようになっています。

画面イメージ 01

左に8ステップの目次。今どこにいるかが常に見えます

かんたんRFP作成サイトの入力画面。左側に8ステップの目次、右側に案件タイプと基本情報の入力欄が表示されている

前章の7項目が、そのまま画面のステップ01〜07になっています。上から順に答えていくだけです。

画面イメージ 02

設問文には「専門用語は不要です」と明記されています

背景・目的・現状の課題を入力する画面。専門用語は不要ですという案内と、話し言葉のまま書かれた入力内容が表示されている
この続きは実際の画面で

入力欄に書かれているのは、次章で使う「店舗の在庫管理」の例です。ご覧のとおり、話し言葉のままで構いません。

7. 一行の要望が、17項目のRFPになる

機能の説明よりも、実際に何がどう変わるのかをご覧いただくのが早いと思います。以下は、実際にツールで作成したものです。

BEFORE

「店舗の在庫管理をシステム化したい」

この状態で問い合わせると、開発会社は「規模は?」「今はどうしている?」「予算は?」と聞き返すしかありません。数回のやりとりが発生します。

質問に答える

今はどう管理しているか/何に困っているか/誰が何人使うか/絶対に必要なことは何か/いつまでに欲しいか/予算感/既存データを引き継ぐか/保守はどうするか/提案書に何を書いてほしいか/何を基準に選ぶか

技術の話は一つもありません。すべて社内の事情です。わからない項目は「わからない」のまま進めます。

AFTER

そのまま複数の開発会社に配れる、17項目・A4で7ページの提案依頼書

17項目
生成されたRFPの項目数
A4×7枚
出力されたページ数
うち6割は「わからない」
空欄ではなく明記——書けなくても提出できる

この案件では、17項目のうち11箇所が「わからない」のままでした。半分以上が埋まっていない状態でも、書類としては成立します。大事なのは空欄ではなく「わからない(提案時にご提案いただきたい)」と印字されることで、受け取った開発会社は、そこが検討対象だと理解できます。埋められなかった箇所が多いほど「相談すべきこと」が明確になる、と捉えてください。

出来上がり 01

話し言葉で書いた内容が、そのまま項目に収まります

生成されたRFPの1ページ目。背景・目的・現状の課題・既存データの引き継ぎ・依頼内容が番号付きの項目に整形されている
この続きは実際の画面で

「既存データの引き継ぎ」は、わからないまま進めた項目です。空欄ではなく、その旨が明記されて出力されています。

出来上がり 02

技術的な項目は、答えていなくても「項目として」立ちます

生成されたRFPの要件ページ。必須要件が平易な言葉で列挙され、技術的制約・セキュリティ・非機能要件・アクセシビリティは、わからない(提案時にご提案いただきたい)と表示されている

必須要件は「タブレットで操作できること」「原価を店舗スタッフに表示しないこと」のように、業務の言葉のままで構いません。その下の技術的な4項目は、すべて「わからない」で通した状態です。

この状態になると、何が変わるか

複数の開発会社に同じ条件で依頼できるようになります。各社が同じ前提で提案してくるので、見積もりを横に並べて比較できます。
そして「わからない」と書いた11箇所が、そのまま各社の提案力を見比べるポイントになります。ここに何を書いてくるかで、会社の姿勢がわかります。

入力した情報は、どこにも送信されません

RFPには、社内の業務内容、現在使っているシステム、予算、抱えている課題、取引条件など、社外に出したくない情報が入ります。「入力したら、どこかに保存されるのでは」という不安はもっともです。

かんたんRFP作成サイトは、入力内容をサーバーに送信しません。すべてお使いのブラウザの中だけで処理され、生成されたRFPもブラウザ上で組み立てられます。テキストのコピー、ファイルのダウンロード、PDFとして保存/印刷も、そのままお手元で完結します。

STVテックへの発注を前提とした書類ではありません

作成したRFPは、そのまま他の開発会社に提出していただいて構いません。相見積もりを取るための土台としてお使いください。

このツールの目的は、発注者と開発会社が「同じ前提」で話せる状態をつくることです。比較検討の結果、他社に決まっても問題ありません。

FREE TOOL

かんたんRFP作成サイト

1
白紙から書き始めなくてよくなる — 7ステップの質問に上から答え、最後に確認するだけで、書類の形になります。
2
「どう書けばいいか」の見本が手に入る — スマホアプリ、ECサイト、社内業務システム、コーポレートサイト、予約管理システム、採用サイトの6パターンのサンプルを読み込めます。自分の案件に近いものを選べば、書き方の見当がつきます。
3
わからない項目で手が止まらない — 技術的な設問にはすべて「わからない(提案時に相談したい)」の選択肢があります。答えられない項目があっても、最後まで進めます。
4
複数社に同じ条件で依頼できる — コピー・ダウンロード・PDF保存ができるので、そのまま相見積もりに使えます。
5
社内の説明資料としても使える — 稟議や上長への説明で「何を頼もうとしているのか」を示す資料になります。
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8. まとめ

本記事では、「開発会社に何を伝えればいいかわからない」という発注者の課題を整理しました。

ポイント内容
書けないのは知識不足ではない書くべき項目の型が、発注者側に共有されていないだけ
専門用語は答えなくていい技術の判断は原則として開発会社の仕事。発注者は社内の事情を答えればいい
発注者が持つ情報こそが要る現場の困りごと・使う人・期限・予算は、発注者しか知らない
まず渡すのは7項目要件をすべて固める書類ではなく、相談・相見積もりを始めるための7項目
空欄があっていい「わからない」と書いてあること自体が、開発会社にとっては情報になる
見積もりは2段階提案時は概算見積もり。確定見積もりが出るのは要件定義を終えた後
一行の要望が書類になる「在庫管理をシステム化したい」から、17項目のRFPが作れる

システム開発の発注で最初につまずくのは、技術ではなく「何を伝えればいいかわからない」という一点です。そこさえ越えれば、あとは開発会社の仕事になります。

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